はじめに
PhotoPEAKIT とは
PEAKITとは、考古資料の三次元データから画像処理によってその形状特徴を抽出する技術です。これによって得られたPEAKIT画像は、考古学的な観察、判読をおこなう上で必要な情報が視覚的に表現できることから、そのまま学術論文や調査報告書に利用されるケースが増えています。
これまでPEAKIT処理の基礎となる三次元データの入力は、高精度かつ高額なレーザー計測機がメインでした。しかしここ数年で、対象物を多方向から撮影した複数の写真から三次元データを生成するSfMの技術が目覚ましく進歩しています。Agisoft社PhotoScanというソフトウェアに代表されるこの進化型SfMは、普通のコンパクトデジカメで撮った写真から三次元データを作成できる手軽さが好評で、考古学者の間でも注目を集めています。
私たちも数年前からこのSfMに着目し、これまでに1,000点をこえる縄文土器の3Dデータ化をおこなうことでその可能性を探ってきました。その結果、(1)撮影方法やデータ処理方法によっては、レーザーで取得した三次元データのクオリティに近い結果が得られること 、(2)撮影の意図を理解したうえで動作に慣れれば、誰でも土器1点あたり約15〜20分ほどの撮影時間で済むことがわかってきました。
但しこのような質の高いデータを得るためには、撮影のノウハウが重要となり、データ処理時間も通常のパソコンなら、ひとつの土器の三次元データを得るために数日間も占有されてしまうほど膨大な計算量になってしまいます。
そこでラングでは、SfMを前提とした土器の撮影ノウハウをマニュアルとして公開することで、どなたでも適切な撮影を可能にし、その写真から当社の高速なワークステーションで三次元データやPEAKIT画像をつくるサービスをはじめます。それが PPサービス(PhotoPEAKITservice)です。
この撮影マニュアルは、どなたにでも撮影のエッセンスを理解しやすいように短編動画を中心にまとめています。そして新たな知見が得られたら、その都度更新していく予定です。もちろんデータの使途が研究資料でないならば高精細なPEAKITは不要ですから、このマニュアルに則らなくとももっと簡単に三次元データを作成することは可能です。ただ、そのような方々にもこのマニュアルの情報はお役に立つはずです。PP利用者に限らず、多くの方にとって立体考古学が身近なものになればと考えています。
このマニュアルの使い方
内容 | 対象者 | |
0.撮影の前に | このページは 、SfMを前提とした土器撮影にあたって知っておくべき基礎知識、準備する道具などを解説します。 | 全員 |
1.基本撮影 | 基本撮影は全ての土器に共通する撮影です。「マーカー撮影」「メイン撮影」「上下端の補強撮影」からなります。 | 全員 |
2.器形別撮影 | 器形や文様によって、基本撮影だけではデータが欠落しやすい部分があります。例えば太い隆帯の両端、肩部周辺、注口部や突起部のつけ根周辺などです。そこで、これらの要素を有する土器では、基本撮影に加えてさらに補足撮影をします。その方法について解説します。 |
全員 |
3.底部撮影 | 底部撮影は、網代痕や糸切り痕など土器底面の情報を表現したい場合の撮影方法です。PPサービスのオプションとして選択できます。 |
PPサービス利用者 |
4.データ転送 | 撮影した写真のデータをラングに転送する方法です。PPサービスを利用する方のみご覧ください。 | PPサービス利用者 |
5.校正/追加撮影 | 作成したPEAKITの校正方法です。仮作成したPEAKIT画像の結果によっては追加撮影をお願いする場合がありますが、そのやり取り方法についての説明です。 PPサービスを利用する方のみご覧ください。 | PPサービス利用者 |