0. 撮影の前に
このページは 、SfMで土器を撮影するにあたって知っておくべき基本原則、適切な環境、準備する道具などについて解説します。
SfM撮影の基本原則
この数年で、SfM/MVSという技術が目覚ましく進歩しています。この技術は多数の視点をもつ写真画像から、各写真の撮影位置、対象物の3次元形状、3次元形状モデルを自動的に生成、復元する技術です。
下の図は、土器を撮影した写真からPhotoScan上で撮影位置を復元した状態で、土器を囲む四角記号がカメラの撮影位置を表しています(イメージ)。こうして対象物を規則的にとり囲むように撮影することで詳細な三次元データを得ることができます。
さて、SfM撮影の大原則は以下の通りです。以下の6つの原則を念頭におくことで、たとえ複雑な器形の資料であっても応用が効くようになります。
1. 撮影対象面に正対する
写真が高解像であるほど参照点の検出精度が上がるので、写真は対象面に正対することが基本です。
2. 視差を大きくとる
ステレオマッチングの原理で3D化するため、それぞれの撮影位置が同じにならないよう、視差を多くとることが基本です。
3. オーバーラップ率を大きくとる
オーバーラップとは異なる写真に写った同じ場所のことです。AGIソフト社Photoscanのマニュアルでは、航空写真の例として80%以上オーバーラップ、60%以上のサイドラップを推奨しています。意外に大きい...と思ってください。
4. 光源と対象物の位置関係を撮影途中で変化させない
共通する特徴点の算出は二次元の画像をもとに行われるので、陰影が変化すると参照点が正しく検出されないことがあります。
5. ピンボケ写真と手ブレ写真は禁物
ピンボケ写真や手ブレ写真は、参照点を検出することができず、三次元を生成するための素材から除外されてしまいます。
6. スケールがわかるものを同時に写し込む
SfMは形状は復元するものの、大きさは復元できません。スケールは、大きさの基準になるものを一緒に写し、これを手がかりにあとから付すことになります。
見ておきたいSfM関係サイト、文献
参考までに、SfMがどのようなものかがよくわかる代表的なサイトをあげますので、ご参照ください。
- 写真に基づく3D空間構築手法の到達点
- 論文「SfM 多視点ステレオ写真測量の地形学的応用」
- ローマを一日にして成す...プロジェクト
- Web上の膨大な写真からローマを1日で構築する方法
- (株)オーピーティーのPhotoscan販売ページ
撮影環境と準備するもの
適切な環境
撮影に適切な環境は以下の通りです。
- 撮影者が土器の周囲をまわりながら撮影するため3畳程度のスペースを確保します。
- キャスター付の椅子をつかいますので平坦な床が適切です。
- 窓や照明の多い環境、明るければ明るいほど適切な環境といえます。
準備する道具
撮影に必要とする道具は以下のものになります。
- デジタルカメラ(バッテリー、メディアカード残量確認)
- 土器を載せる撮影台(正方形や円形の安定感のあるものが良い)
- キャスター付きイス
- 土器固定用文鎮(多数必要)
- マーカーシート (ダウンロードできます↓ 原寸で出力してください)
カメラの設定
撮影するカメラは以下の要領で設定してください。
- カメラの設定は、オート撮影モードにしてください。
- フラッシュはOFFにしてください。(基本原則4)
- 手ブレ防止機能のついたカメラはONにしてください。 (基本原則5)
- フォーカススポットの設定が可能なカメラでは、スポットを画面中央に固定します。
土器の設置方法
土器の設置は以下のようにおこないます。
- 撮影台は、撮影者が土器の周りをまわりながら撮影するためスペースの中心に設置します。
- 撮影台にマーカー用紙をテープ等で固定します。
- 土器の下に、底部径よりひとまわり小さな文鎮を置いて撮影台の天板よりやや高い位置にセットします。これは土器下端部をできるだけ低い位置から撮影するためです。
- 底部の中心が、マーカーシートの同心円の中心の真上になるように土器を置きます。土器の中にも錘を入れて、土器が転倒しないようにしっかりと安定させます。
- このとき土器正面(二次元図で「正面」としたい面)をマーカー用紙の「方位1」に合わせて置きます。
- 追加撮影が必要な場合があるので、撮影台や土器の設置状態(位置や方向)がほぼ同じように再現できるよう、覚えておきましょう。